佐治 重仁
Interview
グループ執行役員インタビュー

リソルホールディングス株式会社
グループ執行役員
リソル株式会社 取締役 ゴルフ事業部長
グループゴルフ場 代表取締役社長

佐治 重仁

SHIGEHITO SAJI

埼玉県立深谷商業高等学校卒。
1999年北武蔵カントリークラブに入社(アルバイト社員)、2011年からグループゴルフ場支配人歴任、リソルゴルフ(株)[現、リソル(株)]マーケティング企画室長、営業企画部長などを経て、2022年より現職。

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ゴルフを何も知らずに入社

高校を卒業して、最初に就職したのが地元のプリント基板をつくる会社でした。昼夜2交代制の工場勤務で周りは外国人ばかり。1ヶ月で体調を崩してしまい退職しました。
「次は作業着じゃなくて、スーツを着る仕事がしたい」と、ホテルかゴルフ場の仕事を探しました。当時は営業職など思いつかなくて、単純にホテルやゴルフ場でスーツを着ているフロントの人の姿が思い浮かびました。たまたま見つけた北武蔵カントリークラブにアルバイトで採用されました。

スーツを着てフロントで接客…と思いきや、最初の仕事はキャディ見習いでした。ゴルフなんてやったことも見たこともない中、先輩キャディさんにつかせてもらいお客様と一緒にラウンドするのです。最初はゴルフクラブの種類も分からず「キャディさんスプーン」と言われてもスプーンって何?フォークもあるの?とか、サンドウェッジはサンドイッチにしか聞こえない。そもそも18ホールということも知らず、いつまで続くんだこれ…って(笑)。そんなスタートでした。

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仕事の本質は、
お客さまを知ること

キャディ見習いの仕事で一番頑張ったのは…ボールを見つけることですね(笑)。
お客さまはゴルフが上手い方もいれば初級者の方もいます。ボールが林の中に飛んでいったりすると、どこにいったか分からなくなる。そのボールをキャディ見習いの僕が見つけるのです。打ったボールをずっと見ていると、途中で見失ってしまうのですが、打った瞬間の方向と上がった角度を見ると、どの辺りにボールが落ちるかを予測できます。あとは予測付近をじっと見ていると落ちた場所がわかる。これは今でも僕の特技です(笑)。
キャディをやっていて気付いたことは、ボールを失くした時のお客さまの反応がなんとも言えない感じになるのです。初級者のお客さまにとってOBやワンペナ(ゴルフにおける罰則ルール)は致し方ないと考えていると思うのですが、ボールがなくなるというのは心理的と同時に経済的にもダメージを受けますから何より痛いことなのです。だからこそ、キャディをやる以上見つけてあげたいって思いました。

ゴルフ場に来場される中心層のスコアは平均100前後だと思います。上手い方だけでなく、初級者の方にも楽しんでいただく。それが大事なことであると学びました。
実はキャディの仕事はお客さまに一番近い仕事なのです。お客さまがどういう風に過ごしているか、何を楽しんでいて、何に不満を感じているか、ずっと一緒にいることで見えてくるのです。人によっても違うので対応を変えていかないといけない。このパーティの中で誰が中心なのか、誰を一番ケアした方がいいかも考えないといけない。そういう意味でキャディの仕事はすごく勉強になりました。

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支配人の仕事は決断すること

キャディのあとは、マスター室、ショップ、フロント…いろんな部署を担当しました。仕事が分かってきて面白みが出てきました。こうしたら売れるんだ、もっと良くするためにはこうすればいいんだって、どんどん仕事が楽しくなってきました。
そんな時に支配人の話が来たのです。
その数年前にアルバイトから契約社員を経て子会社の正社員になったのですが、それも当時は異例だったと思います。それが支配人なんて正直驚きでした。

支配人の仕事は世界が違いました。責任の重さもそうですが、一番は自分が決断しなければ何も進まないことです。例えば「明日の料金どうしますか?」「3ヶ月先の料金どうしますか?」と聞かれて、自分が「じゃあ1万円」と決めなければ永遠に予約もとれない。 YESかNOで聞かれたことでも、YESかNOを答えなければ何も進まない。
その決断をするために、何が正しいのか答えを持っていないといけないことに気づきました。部下から聞かれたときに即答しないといけない。即答するためにはいろんな材料が頭に入っていて、その場で判断しないといけない。これは今もそうですが、大変なことです。

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目的意識がみんなの想いを
ひとつにする

失敗も数えきれないほどしました。一番記憶に残っているのは、最初にゴルフ場支配人になった時のことです。当時レストランの評価があまり良くなかったので、なんとか評価を上げたいと思い、着任してすぐ厨房を見に行ったのです。ランチメニューの中にシーフードカレーがあったのですが、カレーの上に冷凍のシーフードミックスをかけただけのものでした。それを、当時の料理長に「これなら中学生でも作れますよ」みたいな感じで言ってしまったのです。こちらは支配人になりたてで意気込んでいたのです。そうしたら料理長に「お前がやってみろ!」と怒られてしまい…。結局、本部の料飲部から部長に来てもらったり、色んな人達に迷惑を掛けてしまいました。
その時に思ったのは、自分の中で目的意識が定まっていなかったってことです。怒らせることが目的だったのかということです。本当の目的はレストランを良くしてお客さまからの評価を得てもっと値段を上げていきたいということでした。だったら伝え方も順序も違うはずです。目的は何か、その目的を達成させるためにはどうすればいいのか、ということをきちんと相手に伝えれば、前向きに仕事が進んでいくのです。もちろん、同じ目的でも人によって言い方、伝え方は変えなければいけません。そういう意味でもあの時の失敗で得られたものは大きかったと思います。

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お客さまの喜びが先、
売上は後からついてくる

仕事をする上で大切にしていることは、みんなが同じ方向を向くことです。
私たちは会社なので、目的を一言でいえば収益を上げることです。収益を噛み砕くと売上と経費です。売上というのはお客さまですよね。お客さまに来ていただくためには、お客さまが喜んで楽しいと思ってもらわないといけない。だからお客さまを楽しませること、喜ばせることが売上になり収益になるのです。収益は作り出すのではなく、お客さまを喜ばせた結果が収益に繋がるのです。

仕事の判断で迷ったとき「その先にお客さまの喜ぶ姿があるか。」そこが判断基準です。
そこだけ意識してやりましょうと常々言っています。

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会社がチャレンジさせ、
社員が育っていく

リソルグループでは、若手社員が実にたくさん活躍しています。大手の企業だと何となく階段があって、この部長が抜けたら次長が部長に上がるみたいなイメージがありますが、うちの会社の場合は、何の役職もない若手社員がいきなり支配人になったり、部長になったりすることがあります。
よく「社員にはチャレンジしてほしい」という言い方がありますが、うちの場合は会社自体がチャレンジさせにいくのです。業績を上げたり評価を上げたから役職につくというのもありますが、「やらせてみようか」という感じで大抜擢ということもあります。私の例ではないですが、学歴や経歴はもちろん関係ありません。得てして「地位が人をつくり、環境が人を育てる。」そうやって活躍している社員は多くいます。

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ゴルフの可能性は
これから広がっていく

ゴルフ場は、大人にとって夢の国みたいなものだと思っています。仲間と長い時間一緒に過ごしておしゃべりしながら、一打一打に一喜一憂する。次の日ゴルフだと寝られないくらい楽しみにしている人もいます。ゴルフ場はある意味、いきがいや絆、健康、くつろぎを与えられる場だと思うのです。
しかしながら、日本のゴルフ人口は減少傾向で、ゴルフを始める人も増えているわけではありません。5年後、10年後も同じことをして今と同じ収益を簡単に残せる環境ではないと思っています。だからこそ、これからどうやって生き残っていくかを考える面白みがある事業なのです。
ゴルフは絶対になくなりません。そのくらい魅力あるスポーツです。
その一つのカギはバーチャルだと思っています。それぞれの自宅でバーチャルの世界で好きな人と好きなゴルフ場でプレーをすることが可能です。雨の日や遠い町に住んでいる友人、なかなかゴルフ場まで足を運ぶことができなくなったシニア層等。国籍、老若男女問わず楽しめるゴルフがそこにあります。「リアルとバーチャル」2つの世界で描くゴルフ事業の未来へどんどんチャレンジして、ゴルフの可能性を広げていきたいです。

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学生に向けてアドバイス

学生の方やうちの若い社員も含めて若者に向けて伝えたいことは「仕事を楽しめるようになってほしい」ということです。
「仕事を楽しめ」とよく言いますが、この“楽しい”という言葉がピンとこないのが実情だと思います。私だって会社に入ったばかりの頃に「楽しめ」って言われても「何言ってるんだよ」って思っていました。なかなか理解できないのは当たり前のことです。なぜなら学生時代の“楽しい”は、ほとんどがお金を払って楽しんでいることだからです。それが社会人になった途端、お金をもらう立場に180度変わります。言葉は同じ“楽しい”でも、お金を払って楽しむことと、お金をもらって楽しむことは、全く違う“楽しい”なのです。

私の考える「仕事を楽しむ」ということは、何か壁にぶつかって、失敗して悩んで、それでも真剣にその仕事に取り組んで、結果(成功体験)を得られたときに感じるものだと思います。自分の成長を感じたときに“楽しい”と感じます。失敗しても、失敗だってわかっただけでも成長です。そうやって一歩一歩成長していって、一度結果(成功体験)を得られたら、そこからは考えたり、悩んだりすること自体が楽しくなります。壁が大きければ大きいほど楽しさも大きくなるからです。なので成功を体験し、仕事が楽しくなるよう、どんどんチャレンジしてほしいと思います。